奈良が生んだ近代陶芸の巨匠!『富本憲吉展』奈良県立美術館

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奈良が生んだ近代陶芸の巨匠!『富本憲吉展』奈良県立美術館

奈良が生んだ近代陶芸の巨匠!『富本憲吉展』奈良県立美術館

更新日:2015/02/09 11:23

いずみ ゆかのプロフィール写真 いずみ ゆか ライター

一人の芸術家の視点から、”今までとは違う奈良の魅力”を発見してみませんか?
奈良県生駒郡安堵町出身の「富本憲吉」は、1955年(昭和30年)に人間国宝(重要無形文化財保持者)に認定された近代陶芸の巨匠。現在、奈良県立美術館では、2015年3月15日まで『富本憲吉展〜華麗なる色絵・金銀彩〜』が開催中です。富本作品の中で代表的な色絵磁器やそこに金と銀を焼き付けた金銀彩の作品を中心に見所をご紹介します。

今回の富本憲吉展の魅力はここ!<第1展示室>陶芸家・富本憲吉

今回の富本憲吉展の魅力はここ!<第1展示室>陶芸家・富本憲吉

写真:いずみ ゆか

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幼少より様々な芸術分野を学んだ富本憲吉は、六世尾形乾山に入門した友人バーナード・リーチの影響を受け、陶芸の道へ。
楽焼制作から始まり、土焼・白磁・染付と幅広い創作活動を展開しましたが、富本憲吉と言えばやはり、鮮やかな色絵磁器と富本が完成した技法として名高い金銀彩、そして羊歯(しだ)文様などの独自の作陶様式の作品が有名でしょう。

【魅力1】実は、奈良県立美術館は日本屈指の富本作品を収蔵する美術館であるため、その美の真髄を余すところ無く堪能出来るのです。

【魅力2】更に今回は、「ふるさと知事ネットワーク」の美術館交流により、石川県内の博物館・美術館から作品提供を受けている事が特徴。石川県で色絵技法を研究した富本憲吉がどの様に九谷の技法を取り入れ、九谷の陶芸家たちに影響を与えたかを知る事が出来ます。

【魅力3】開館当初から継続して富本憲吉の展覧会を開催している奈良県立美術館ですが、故郷・安堵町(あんどちょう)とコラボレーションした企画は今回が初めて。富本作品を知る上で欠かせない”奈良の魅力”も味わいましょう。

序章では、「大和時代」「東京時代」「京都時代」の3つの代表的な時期の作品の特徴が分かります。

第1展示室は、色絵磁器に至るまでの様々な試みがなされていた2つの時期の作品を展示。
●「大和時代」故郷の安堵町で本窯を築き、独学で土焼から磁器に至る作陶技術を研究していた時期。「模様から模様を作るべからず」という生涯の創作理念に辿り着き、奈良の身近な植物や風景から独自の模様を生み出しました。

●「東京時代」東京に移住し、白磁と染付を中心に制作。また色絵技法を研究するために石川に滞在していた時期。

出品リストNO.23の『赤絵羊歯模様大角陶板』は、後の代表的な羊歯の連続模様を予感させる羊歯の姿を写実的に取り上げた初期作品なので必見です。

<第2展示室>富本憲吉と九谷焼

<第2展示室>富本憲吉と九谷焼

写真:いずみ ゆか

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色絵磁器の試作を進めていた富本憲吉は、1936年(昭和11年)に九谷焼の窯元・北出塔次郎の元に半年間滞在。その後も何度も石川県を訪れて実地で色絵の複雑な技術を研究し、制作しました。古九谷(※)など古陶磁からも学んだ事がうかがわれ、19世紀の再興九谷と呼ばれる時代を中心とした九谷焼の歴史や各窯元の著名な作品を観る事が出来ます。

中でも、富本憲吉が石川県で制作した事が明らかなNO.50『色絵罌粟(けし)大飾皿』や色釉が流れるのを止めるために黒点を打つ九谷焼の手法を取り入れたNO.56の『色絵水瓶図大円陶板』は注目作品。

■写真の『色絵四弁花更紗模様六角飾筥』(富本憲吉・奈良県立美術館蔵)の四弁花模様は、この頃に完成した富本作品の代表的な創作模様の1つ。テイカカズラの花がモチーフで、本来は五弁の花ですが、連続模様として使いやすいよう四弁なのです。鮮やかな色絵が映え、リズム感あるデザインは、思わずため息が出るほどの美しさ!

※古九谷については、実は有田で焼かれたとする産地論争がある

<第3展示室>富本と交流した九谷の陶芸家たち

<第3展示室>富本と交流した九谷の陶芸家たち

写真:いずみ ゆか

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富本憲吉が石川に滞在していた頃、九谷焼は明治期の勢いを失っており、その存在と作品は、現状を打開しようとする九谷の陶芸家たちに多大な影響を与えています。

特に滞在先だった北出窯の当主・北出塔次郎は、富本から多くの指導を受けました。ここでは、影響を受けた作品からその教えを昇華し、新たな作風を展開していった作品を観る事が出来ます。他に、富本憲吉に影響を受けた二代コ田八十吉や森一正の作品も。

■写真のNO.57『色絵遊鯉図中皿』(北出塔次郎・石川県立美術館蔵)は、「現実の自然の写生にもとづいて絵や模様を描くべき」という富本の影響を受けた事が分かる写実的な模様の作品。

これぞ富本憲吉!鮮やかな色絵と金銀彩!<第4展示室>と<第5展示室>

これぞ富本憲吉!鮮やかな色絵と金銀彩!<第4展示室>と<第5展示室>

写真:いずみ ゆか

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第4展示室と第5展示室は、富本憲吉の真骨頂とも言うべき「色絵磁器」「金銀彩」作品と現代九谷の陶芸家作品の展示でとても華やか!

石川滞在で色絵技法を習得した事から、「多色表現」「より絵画的な表現」「洋花など草花模様にバリエーションが増える」「描線で見せる→色で見せるデザイン」といった特徴が作品に加わり、更なる彩豊かな独特の作品が生まれました。

NO.67『色絵円に花模様飾筥』は、カーネーションとダリヤの洋花模様と幾何学模様とが組み合わさる事で、効果的に華やかさが際立ち、上記の特徴が分かりやすい作品なので必見です。

富本憲吉は、色絵磁器に金と銀を同時に焼き付ける「金銀彩」の技法を編み出した事で大変有名です。金と銀は焼き付けに適した温度が異なるので、同時に焼き付けるのは本当に困難。それを「銀に金を混ぜる+色味を銀にするためプラチナを混ぜる」方法で解決し、京都に移住した「京都時代」に精力的に制作しました。

■写真の『赤地金銀彩羊歯模様蓋付飾壺』(富本憲吉・奈良県立美術館蔵)は、金銀彩で富本作品で代表的な羊歯連続模様が焼き付けられた、これぞ富本憲吉!と言うべき代表作です。(第5展示室)

どの作品も華やかな中にシンプルな部分があり、どこか素朴で凛とした雰囲気。何となく富本憲吉の故郷・奈良に通じるものを感じさせます。
特に、富本憲吉が考案した「かきおこし」技法※のNO.98『金銀彩羊歯模様大飾皿』を現地で実際にご覧下さい。まさに余白の美!
 

※最初に赤で模様を描き、その上に再度、金や銀で模様を描いて焼き付ける方法

富本憲吉の真髄!<第6展示室>白磁/富本と安堵

富本憲吉の真髄!<第6展示室>白磁/富本と安堵

写真:いずみ ゆか

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富本作品は、色絵磁器や金銀彩のインパクトが強いですが、実は富本憲吉が一番好んだのは、最もシンプルな「白磁の壺」。継続して制作されました。
「壺を見る上で最も肝心な事は、その壺の形であり、釉や模様はその本体を飾るに過ぎない。(中略)形はその根源となり、立体である壺としての生命の源泉である」(富本憲吉「白磁の壺」より。展示解説から抜粋)

富本憲吉が白磁の造形美を追求し、原点を大切にする姿は、故郷・安堵町への想いにも繋がるのではないでしょうか?

第6展示室の『異本安堵村八景』には安堵村の日常風景(八景)が描かれ、構図として昇華されました。第5展示室のNO.91『色絵金銀彩染付大和川急雨模様大飾皿』にあった”大和川急雨”の絵もあるので注目です。

また、亡き父が生家の庭に植えた芍薬を写生し模様にするなど、富本憲吉がなぜ草花をモチーフにしたか背景も分かります。是非、富本作品の真髄ともいえる白磁と故郷・安堵町の関係から、奈良の魅力も感じてみて下さい。

今までとはちょっと違う視点から楽しむ奈良!

一連の作品を観終わると・・・富本憲吉の原点”安堵町”とはどの様な地なのかと想いを馳せるはず。
ミュージアムショップに併設されたギャラリーでは、安堵町との連携展示「陶芸のさと安堵〜富本憲吉の足跡をたどる〜」で安堵町と戦時中の富本憲吉の陶業などを紹介しています。
太子道があり聖徳太子とも縁が深い安堵町。次の奈良旅行には安堵町へというのも一興では?

奈良県立美術館は近鉄奈良駅から徒歩約5分の駅近です。古都奈良の世界遺産もすぐそば!『富本憲吉展』で更に一歩深い視点から素朴で美しい奈良を楽しんで下さい。

■『富本憲吉展〜華麗なる色絵・金銀彩〜』
<開催期間> 2015年01月17日(土)〜2015年03月15日(日)
<開館時間> 9:00〜17:00(入館は閉館30分前まで)
<休館日> 月曜日
<入場料> 一般400円/大高生250円/中小生150円
<関連イベント> 富本憲吉展/奈良県公式ホームページ参照

※掲載写真は、取材のため許可を得て撮影。作品の撮影は禁止なのでご注意下さい。

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/01/20 訪問

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