写真:けいたろう
地図を見る下北沢の駅で電車を下り南口を出ると、古着屋さんを初めとする個性的なショップが軒を連ね、街が丸ごと雑貨店のようで、いかにも若者文化といった景色が広がります。
下北沢は演劇の街でもあり、多くの劇場が集まっています。中でも珍しいのが、自主製作の映画を持ち込んで上映できる『短編映画館TOLLYWOOD』というミニシアター。こちらでは、新進気鋭の若手映画監督の作品の鑑賞も可能で、まさにサブカルの聖地といった雰囲気。
さまざまな人や街を見ながらショッピングと散策を続け、TOLLYWOODから南へさらに歩くこと10分。すっかり辺りも静かになった住宅街で、邪宗門は営業しています。
外から見るとシンプルな外観ですが、店内には雑多な古めかしい物が置いてあって、今まで見てきた下北沢の街に負けないほどに、けっこうカオス。
しかし、奥から出てきてくれるマスターはニコニコととっても人懐っこい雰囲気。実はこのマスターにも秘密がありますが、それはのちほど。
【店舗情報】
住所:東京都世田谷区代田1-31-1
TEL:03-3410-7858
営業時間:AM9:00〜
定休日:木曜日
【アクセス】
・下北沢から
各線の下北沢駅を下車。
南側出口を出て、徒歩で南へ15分。
写真:けいたろう
地図を見る今回紹介する邪宗門という喫茶店は、実は同じ名前の喫茶店が日本国内に数店舗存在します。しかし、チェーン店ではなく、あくまでグループとのこと。邪宗門グループ、名前だけ聞くとまるで悪の秘密結社(笑)。
いかにも元ネタのありそうな店名は、江戸時代のキリスト教の呼び方で、1909年(明治42年)の3月に北原白秋が24歳で上梓した処女詩集のタイトルにもなっていて、その白秋の詩集が店名の由来となっています。
グループの起源となったお店は、1955年(昭和30年)の東京都の国立(くにたち)に、ロージナ茶房という喫茶店と隣り合う場所に誕生しました。創業当時の国立の駅は今ほど賑わってなくて、駅から歩いてくるお客さんを発見すると「お前のトコの客が来たぞ」なんてマスター同士で言いながら、経営していたそうです。
国立の邪宗門は50年以上の歴史を経て、2008年に閉店になっていましたが、ロージナ茶房はマスターが2代目に代替わりして、お店は当時のままの場所で今も経営していて、国立駅を代表する喫茶店となっています。
写真:けいたろう
地図を見る邪宗門グループの起源となった国立店のマスターは名和孝年さんという方で、元船乗りでマジシャンという変わった経緯の持ち主でした。やがてお店を経営していくうちに、マジシャン仲間が集まり、名和さんの価値観に共感した方がそれぞれ自発的に邪宗門の名前を冠して喫茶店の経営を初め、邪宗門グループが誕生しました。
ちなみに、邪宗門グループでは、マスターのことを寺院の長になぞらえて、門主と呼びますが、門主になるには鉄の掟があります。一つは儲からないこと。そしてもう一つが手品師であること。
というわけで、こちらの世田谷邪宗門の門主の作道明(さくみちあきら)さんもマジシャン。しかも、脱出マジックで一世を風靡した初代引田天功から、直接マジックの手ほどきを受けたというスゴい方なのです。
写真:けいたろう
地図を見る邪宗門の店内には、天井からはいくつものランプが垂れ下がり、時代がかった扇風機や、柱時計、カメラ、黒電話、隠れ切支丹関連のアイテムやレコード盤など様々な古い物で溢れかえっています。
さまざまなオブジェで溢れる店内の中でも特に目を引くのが、壁に何丁も掛かっている古い銃の数々。中には、珍しい隠し銃まであるので、古式銃マニアならずとも興奮してしまいます。こちらのコレクションの多くは、昭和20年代に軍の物資を運ぶ輸送船に乗って南太平洋を航海していた初代門主、国立邪宗門門主の名和さんのコレクションだそうです。
また店の奥には唐突に美空ひばりコーナーがあり、多くのレコードが貯蔵されていて、お店のBGMとしても掛けていただけます。こちらは世田谷店門主のコレクションとのこと。
こちらのコーヒーは、あくまでベーシックな昔ながらの喫茶店のコーヒー。下北沢の若者文化に触れながら歩き回ったその日に、お嬢の歌声をBGMに聞きながら飲むと、何だか21世紀とは思えない不思議なムードに包まれます。
邪宗門の独特の世界観は、TVなどのメディアでも何度も取り上げられ、ドラマなどの舞台になっています。
国立の邪宗門は、トレンディドラマ全盛期の1996年にフジテレビ系列の月9として放送された『おいしい関係』で、主人公である唐沢寿明演じる織田圭二が働くメインの舞台である洋食店「プチ・ラ・パン」として登場しています。
また、世田谷邪宗門は、京アニ制作のTVアニメ『境界の彼方(きょうかいのかなた)』に登場します。このアニメの舞台は橿原市で、聖地として橿原神宮などが登場するのですが、重要スポットの『新堂写真館』として何故か突如として、東京にある邪宗門がモデルとして登場します。
写真:けいたろう
地図を見る邪宗門グループの喫茶店は、都内にもう1軒、杉並区の荻窪にあります。
もともと国立で誕生した邪宗門は、都内では国立、世田谷、荻窪、聖蹟桜ヶ丘にありましたが、現存しているのは、世田谷と荻窪だけになりました。
こちらの荻窪邪宗門は、亡くなった門主の奥様が切り盛りしています。狭い入口を入るとすぐに急こう配の階段が現れ、2階がお客様用のイスやテーブルが置いてある店舗スペースとなっています。
階段の先には、世田谷同様に、多くのインテリアが置かれていています。また荻窪店で特徴的なのが、古くてマニアックなマンガの数々。心地良い狭さの店内は、まるで秘密の屋根裏部屋のようで、妙に落ち着きます。
注文してしばらくするとコーヒーが運ばれてくるのですが、階段が直接見えない席も多く、マンガに夢中になっていると、いつの間にか奥様がコーヒーを持ってきてくれています。
小さくて可愛らしいマダムが急な階段をどうやってコーヒーを持って上がって来たのか考えると不思議で、まるで手品か魔法のようです。
世田谷店では、シンプルなカップに入っていますが、荻窪店ではコーヒーポットと、美しい彫金が施された持ち手に入ったステキなカップで淹れてくれます。
荻窪という街は、都内から抜群のアクセスを誇る割に落ち着いた雰囲気で、住むのに適した街であり、お散歩に出かける所ではないと認識のある人も多いと思いますが、ラーメン激戦区であったり、アニメの博物館である『杉並アニメーションミュージアム』や、都内の紅葉の隠れ家的スポットの『大田黒公園』などがあり、散策の楽しい街でもあります。
ゆったりとした気分で歩いた街ぶらの最後に荻窪邪宗門はオススメです。
【店舗情報】
住所:東京都杉並区上荻1-6-11
TEL:03-3398-3411
営業時間:15:30位〜21:00
定休日:不定休
【アクセス】
各線荻窪駅で下車。
北側出口を出て、徒歩で東へ2分。
今回紹介した邪宗門は、独特の怪しさとくつろぎを感じるお店で、サブカルの街である下北沢散策の最後に立ち寄るお店としてピッタリです。どこか文学の香りも漂うお店のムードから、森茉莉さんやよしもとばななさん、萩原葉子さんといった多くの女流作家が常連となり、コーヒーを飲むだけでなく、執筆もされていたそうです。
現在は門主も、マジックをあまりやらないらしく、あくまでタイミングが合えばやってくれるという感じだそうですので、披露して頂いたらとってもラッキー!
今回紹介した都内2軒以外の邪宗門は、静岡県の下田、新潟県の石打、神奈川県の小田原、富山県の高岡に存在します。お近くにお出掛けの際には、ぜひお立ち寄りください。
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(2024/10/14更新)
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