写真:SHIZUKO
地図を見る1958年に開業した、動く巨大カニ看板で有名な『かに道楽』本店は、道頓堀の戎橋のたもとにあります。♪と〜れとれピ〜チピチカニ料理…と、浪花っ子ならだれでも口ずさむことの出来る大阪の代表的なお店。
子どもの頃、道頓堀に芝居を観に行くと、舞台を見るよりも、かに道楽のトロットロのかにが乗ったお寿司を食べることが楽しみだった記憶があります。その頃は、巨大看板はかに道楽だけだったと思うのですが、今や道頓堀はすごいことになっています。
『大阪王将』の巨大餃子に廻る寿司の元祖『元禄寿司』のマグロの握り。カールおじさんもいるし、『昭和ホルモン』の牛がいるかと思えば、大阪ラーメンの老舗『金龍ラーメン』の龍も健在です。ラーメンがこんなに世間を席巻していない頃、ミナミでは、飲んだあとには金龍というくらい多くの人が通ったトップクラスのラーメン屋さん。ちなみに劇団☆新感線の怪優・古田新太さんたちがアルバイトしていたお店です。
ブラブラ歩きながら見ているだけでも、楽しくなる道頓堀の看板群です。
写真:SHIZUKO
地図を見る人の往来も激しく、一見若者パワーに溢れるように見える道頓堀界隈ですが、一筋横道に入れば、とても静かな生活の空間が広がっています。
その代表格が『法善寺横町』。
映画にもなった、昭和の純文学作家・織田作之助の代表作『夫婦善哉』に登場するこの地は、狭い石畳の道の両側に、古くからのバーや料理屋が並ぶ風情ある大阪の町。着物に前掛け、下駄履きの生活が当たり前のように感じる路地です。
およそ10年前に、二度の大火災に見舞われ、道幅の狭さが問題となり再建が危ぶまれたけれど、多くの市民の署名運動により、なんとかかつての姿のままに今も生き続けている町です。
町の中心は『法善寺』というお寺。苔むした『水掛不動』さんにいつも多くの人がお参りしています。さっきまで歩いた騒々しい道頓堀とのギャップにびっくりする人も多いのではないでしょうか。線香の煙が絶えないお寺のそばには『夫婦善哉』というお店が現存しています。2つのお椀に小さな白玉がひとつずつ入って一人前のおぜんざい。恋人同士で食べれば、円満になれるという縁起物だそうですので、一度お試しくださいね。
写真:SHIZUKO
地図を見る江戸時代、今のかに道楽の動く看板から東側に伸びる道頓堀に、浪花座・中座・角座・朝日座・弁天座という五つの劇場がありました。これが『道頓堀五座』と呼ばれる、当時のエンターテイメントの中心地。五座以外にも大小の劇場が立ち並び、今で言うニューヨークのブロードウェイやロンドンのウエストエンドに匹敵する劇場街だったそうです。
意外に知られていないのですが、ミュージカルや歌舞伎の舞台に欠かせない『回り舞台』や『迫り(舞台面が上がったり下がったりする装置)』の発祥は、実は、この道頓堀です。今や演劇の舞台に当然のように存在している舞台機構は、日本の技術力と発想力が生み出し、世界の演劇を支えてきたのです。
一方、大阪ミナミが繁華街として発達したのは、劇場に来る人々のために飲食店ができていったからだとのこと。つまりは文化と実業が協働して、大きな歓楽街として発展したということです。
そんな道頓堀五座も、残念ながら、現在はすべて姿を消しました。でも、大正時代に道頓堀の西側に開業した『松竹座』が紆余曲折を経て、現在も立派な劇場として活躍しています。
特徴的なネオ・ルネッサンス様式の正面の大アーチは見応え充分。歌舞伎公演を中心に、いろんなジャンルの華やかな舞台が毎月繰り広げられています。今も現役で頑張っている劇場に足を運んで、ワクワク体験をしてみてください。
写真:SHIZUKO
地図を見る道頓堀五座の一番東端にあった『朝日座』は、人形浄瑠璃文楽=『文楽』を上演していた劇場でした。
ユネスコの『無形文化遺産』に登録されるほど素晴らしい人形浄瑠璃は、浄瑠璃・三味線・人形の三位一体の総合芸術。三味線の生演奏と、太夫さんの生の語りに合わせて人形が舞台狭しと演技する舞台芸術です。特に、三人で一体の人形を操る方法は、文楽独自の伝統で、世界的にも稀有な芸術形態です。
人形そのものも芸術品なのですが、操る人たちの修行の日々も壮絶なものがあります。いわゆる主役を演じるまでには25年近い研鑽の日々。一つ一つの演目を覚え、それぞれの役柄を理解し、人間以上に人間くさい『命』を人形に吹き込むためには、長い年月がかかるそうです。
そんな人形浄瑠璃文楽が観られる劇場は、旧・朝日座があった場所から、さらに東に10分ほど歩くと、ちゃんと立派に文楽専用劇場として存在しています。その名も『国立文楽劇場』。
もともとは『竹本座』という劇団が上演していた文楽が、いまや国立劇場として継承されています。
文楽は、江戸時代ほど、熱狂的には支持されていない現状ですが、世界的に類を見ない日本を代表する芸術ですから、ぜひ、多くの人に楽しんでもらいたいなあと、中学生の頃からのファンの私は願ってやみません。
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(2023/12/7更新)
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