修験道の聖地・金剛山

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修験道の聖地・金剛山

修験道の聖地・金剛山

更新日:2013/02/18 12:34

沢木 慎太郎のプロフィール写真 沢木 慎太郎 放送局ディレクター、紀行小説家

大阪と奈良の府県境にまたがる金剛葛城山系の主峰・金剛山(標高1125m)。
かつては高天山(たかまやま)と呼ばれ、古から日本の神々が住まう高天原として伝えられています。
山岳信仰の聖地の一つとして今も修験者たちが修行をする金剛山。その聖地に雪が降ったので、美しい樹氷の花を見に行きました。

修験道の祖・役小角が開いた転法輪寺

修験道の祖・役小角が開いた転法輪寺

写真:沢木 慎太郎

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金剛山の山頂には、今から約1300年前に修験道の開祖・役小角(えんのおづの)が開いたとされる転法輪寺(てんぽうりんじ)があります。
山頂への一般的な登山ルートは10近くありますが、もっともポピュラーなのは大阪府側の千早城跡から登るコース。初心者には、金剛山ロープウェイで山頂近くの標高1053mから山頂を目指すコースがおススメです。

南海・近鉄線の河内長野駅から南海バスに乗り、千早城跡の登山口へ。積雪はあまりなかったので、アイゼンを着けずに登ります。
千早城跡は、南北朝時代に、金剛山の麓の村で生まれた武将、楠木正成が500人の軍勢で、数万の鎌倉幕府軍を相手に立て籠って勝利した場所です。正成軍の大半は、農民出身の者で、兜もなく、上半身が裸の者もいたそうです。
城跡に建つ千早神社に手を合わせ、山頂を目指します。

仲のいいわんこの夫婦に会いました

仲のいいわんこの夫婦に会いました

写真:沢木 慎太郎

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金剛山は都市の近郊にあるため、休日には多くの人々が登山に出かけます。登山道で登りと下りの人たちが顔をあわせると、必ずと言っていいほど、「こんにちは」と声をかけあいます。
3歳くらいの幼児にウサギの耳がついたピンク色の帽子をかぶせて、手を引きながら歩いている親子に出会いました。
そんな光景を見ていると、爽やかでほほえましい気持ちになることができます。

五合目付近で、大きな犬を連れて登山を楽しんでいる女性にも会いました。
飼い主の方の許可を得て、写真を撮らせていただきます。ハイ、ポーズ。
この犬たちは、夫婦なのでしょうか。とても仲がいいのが印象に残りました。

気がつけば雪が深くなり、ここでアイゼンを着けます。
まわりを見渡せば、いつの間にか美しい樹氷が立ち並び、幻想的な世界が広がっています。

最高峰の近くに建つ葛木神社

最高峰の近くに建つ葛木神社

写真:沢木 慎太郎

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登山を始めてから、ゆっくり歩いて約60分で山頂に着きます。
山頂の広場からは見晴らしがよく、天気が良ければ明石海峡大橋を見ることができます。
山頂付近には、鬱蒼とした杉木立に囲まれた転法輪寺が、雪の中にひっそりとしたたたずまいを見せています。

転法輪寺は、修験道の道場でもあります。
修験道は、山へ籠もって滝に打たれるなど、厳しい修行を行なうことで悟りを得ようとします。修業をして迷いを払い、験徳を得ることから、修験者と呼ばれています。また、山に伏して修業をする姿から、山伏ともいわれています。

7世紀に金剛山の奈良県側の麓で生まれた修験道の開祖・役小角が16歳の時に金剛山に登り、修業を積み重ね、霊山として創設したと伝えられています。
役小角は、役行者(えんのぎょうじゃ)とも呼ばれることもあります。
役小角は、吉野山や大峯山、熊野、天河大弁財天社(天河神社)など多くの場所で修業しました。

金剛山には、役小角のゆかりの地である葛木神社もあり、多くの人たちが参拝に訪れています。樹氷に囲まれた中に建つ神社は美しく、気持が清められます。

日本の神々と向きあう

日本の神々と向きあう

写真:沢木 慎太郎

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金剛山では、役行者の命日である7月7日になると、“れんげ祭り”が行なわれます。
多角形の小さな帽子を額につけ、手に錫杖(しゃくじょう)と呼ばれる杖を持ち、袈裟と、篠懸(すずかけ)という麻の法衣をまとった山伏たちが、ほら貝を吹きながら葛木神社から転法輪寺まで歩き、転法輪寺で破魔矢を射ったあと、護摩を焚いて山を清めるといった神仏混交の珍しい祭りです。
お経を唱えながら護摩を焚いた後は、燃えて炭になった木を地面に並べ、山伏たちが丸太の上を次々に歩いてゆく“火渡り修行”が行なわれます。一般の人も参加することができます。

役小角は吉野山の金峯山で、インドから伝わった仏教の仏でも、神道の神でもない、日本独自の仏が権(かり)の姿で現れたのを見たらしく、この体験をもとに修験道を築いていったようです。役小角は、日本の神を見たのかもしれません。

新しい自分に出会う場所

新しい自分に出会う場所

写真:沢木 慎太郎

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修験道について、転法輪寺の住職さんが、わかりやすい言葉で語っています。
印象に残ったので、最後に記します。

「あなたは山が好きですか。
あなたは花や木や鳥や雲は好きですか。
好きだとお答えになった方々はすでに、
修験の道をあるいているかも知れません。
私たちは山を歩きながら、
自然と自分がひとつであることに気がついたり、
生かし生かされていることに感動し、
新しい自分に出会えることができるのが、
修験の道のひとつだと思います」

古の日本人は、自然の恵みをもたらす山岳に畏敬の念を持ち、神々が宿る場所だと信じられていました。
また、高い山は天に近いので、死者の霊魂が帰ってゆく場所とも考えられていました。
こうした日本古来の山岳観と、自然崇拝や神道、道教、佛教などが溶けあい、日本独自の山岳信仰である修験道を生み出しました。
都会に近い場所でありながら、ちょっとした修験道の空気に触れ、非日常の空間に自分を置くことで、いいアイデアが浮かび、仕事やプライベートなことに活かすことができる、そういった魅力が金剛山に備わっていると思います。
そんな金剛山に一度、訪れてみてはいかがでしょうか?

掲載内容は執筆時点のものです。 2013/02/09 訪問

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