写真:乾口 達司
地図を見る深夜未明まで厳しい修行が半月にわたって続く「お水取り」。法要をとりおこなう練行衆(修行僧)の方々は、いったいいつ、食事や休憩をとっておられるのか。そう疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。仏に仕える練行衆も生身の人間。食事をとらなければ、厳しい修行を続けていくことはできません。したがって、毎日、二月堂の下に位置する食堂(じきどう)にて食事が供されています。
しかし、練行衆にとって、この食事もまた厳しい修行の一環。その証拠に食事は「食堂作法」と呼ばれています。しかも、本行の期間中、彼らが正式に食事をとるのは、このときのみ。一日一食という規定からも、修二会がいかに過酷な修行であるか、おわかりになるでしょう。
昼前になると、練行衆に仕える方々が練行衆の口にするご飯や汁物などを食堂に運びこみます。写真はその様子を撮影した1枚。正午の鐘を合図に練行衆が隣接する参籠宿所から出てこられます。食事が待ち遠しいのか、みなさん、笑みを浮かべながら食堂に入られます。
写真:乾口 達司
地図を見るしかし、食事もまた修行の一つである以上、食堂に入ったからといって、すぐに食事にありつけるわけではありません。30分にわたる読経を経て、ようやく食事がスタート。しかし、その中身は一汁一菜と実に簡素である上、彼らは飯器に盛りつけられた飯のすべてを口にするわけではありません。
では、余った白飯はどうなるのでしょうか。その使い道の一つを示しているのが、こちらの写真。白飯の一部は紙に包み込まれ、食堂からの退出の際、南側に隣接する閼伽井屋(あかいや)の屋根に放り投げられます。これは「生飯投げ(さばなげ)」と呼ばれており、鳥獣たちへ食物をほどこすという意味合いがこめられています。
食事といえども修行であり、鳥獣にまで恵みを与えるものであるという点に食堂作法ならではの特色があるといえるでしょう。
写真:乾口 達司
地図を見る食堂作法を終えた練行衆は、その後、二月堂に上堂し、修行をおこないます。え?練行衆の上堂は、夜を迎え、お松明の先導によってなされるのではないの!?そう驚かれる方も多いはず。実は法要は日中もおこなわれているのです。
「お水取り」では日中から夜明けまでの一日が六つの時間帯に分けられており、「六時」と呼ばれています。具体的には「日中」「日没」「初夜」「半夜」「後夜」「晨朝」と呼ばれており、それぞれに法要などがいとなまれているのです。お松明の先導によって上堂し、おこなわれる夜の法要は「初夜」以降のもの。食堂作法の後、務められるのは「日中」と「日没」の法要なのです。
写真は西側の局(内陣および外陣をとりかこむようにして設けられている回廊状の空間)で「日中」と「日没」の法要を拝観する参拝者。
夜間は堂内が暗く、法要の様子もわかりにくいのに比べて、昼間におこなわれる「日中」「日没」の法要は明るいだけあって、比較的、見学しやすいのが魅力。参拝者の数もそれほど多くはないため、昼間の拝観は、堂内の法要を拝観するのに狙い目であるといえるでしょう。
写真:乾口 達司
地図を見る昼間に訪れる役得はほかにもあります。それは、夜、暗くてなかなか目に入りにくい松明をじっくり拝観することができる点。
お松明は本行中の3月1日から14日まで、毎夜、二月堂に上がりますが、松明は食堂作法のおこなわれる食堂の壁面に立てかけられているので、食堂作法の折にあわせて拝観し、その大きさに圧倒されてみてください。
写真:乾口 達司
地図を見る3月13日の未明、二月堂を出た練行衆は二月堂の下に建つ閼伽井屋へとおもむきます。そして、「若狭井」と呼ばれる湧き水(若狭国から流れてくるといわれている)を汲み取ります。修二会の一般的な呼び名である「お水取り」の名は、この行法から出ています。
未明におこなわれる「お水取り」の時間帯ではわかりにくい閼伽井屋の外観も、日中ははっきり確認できるため、松明とあわせて拝観しましょう。
夕方以降の法要ばかりに目を奪われがちな「お水取り」ですが、日中も法要が続けられていること、おわかりいただけたでしょうか。日中は参拝者の数も比較的少ないため、行動しやすいのでお勧め。遠方から泊りがけでこられる方は日中の法要にも足を運び、「お水取り」の魅力を堪能してみてください。
2024年2月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2024/10/11更新)
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