ラオス南部の都市、パクセ(Pakse)からバスに乗って1時間。メコン川岸にある小さな村チャンパーサック(Champassak)に、「ワット・プー(Vat Phou)」があります。ラオスに2つある世界遺産のうちの1つである「ワット・プー」、正式登録名は「チャンパサック県の文化的景観にあるワット・プーと関連古代遺産群」といいます。
そもそもこの寺院の生い立ちは、聖なる山「プー・カオ(Phu Kao)」の存在なくしては語れません。この辺り一帯に王朝を築いていたクメール人は、プー・カオの頂きにある突起をシヴァ神の象徴であるリンガ(男性器)に見立て、プー・カオを神聖視するようになりました。プー・カオはシヴァ神の家、そしてメコンをガンジス川に例え、ここにヒンドゥー寺院を建てたといわれています。山を意味するプーに、寺を意味するワット。つまり「ワット・プー」は山寺という意味なのです。
バライ(baray、人工池)と宮殿の遺跡群を過ぎ、リンガの石柱で飾られた石畳の参道をたどり、ラオスの国花であるチャンパー(プルメリアの花)の香り立つ急な石段をよじ登れば、小高い丘の上に建つ祠堂(しどう)へと導かれます。
5〜6世紀頃には既に寺院が存在したといわれていますが、現在私たちが目にするのは11〜13世紀に建てられた寺院です。本堂は損傷が激しいものの、その壁や梁(はり)などを美しく飾ったレリーフに、ヒンドゥー教の名残が見られます。
祠堂入口の側面に施されたデヴァター(Devata、女神)は丸みを帯びた穏やかな顔つきを、そして祠堂を守護するドヴァラパーラ(Dvarapala、門衛神)が、武器を手に力強く立つ姿を今に残しています。
ヒンドゥー教の祠堂の中に祀られているのは、どことなくユーモラスさを感じさせる黄金の大きな仏像です。13世紀頃になると、タイ・ラーオ系民族がこの地を占領し、上座部仏教寺院としてワット・プーに仏像を安置しました。
ヒンドゥー教と仏教が混在する不思議な空間、現在は仏教寺院として人々の厚い信仰を集めています。仏前にはラオス独特のお供え物マークベンが飾られ、熱心に三顧参拝をする仏教徒の人々が跡を絶ちません。お祈りをしたら、壇上にある岩のおまじないを試してみましょう。心の中で願い事を唱えたあと、両手を岩に添え腰を浮かさずに持ち上げられたら、その願いがかなうといわれています。
*マークベン
バナナの葉を重ねマリーゴールドの花を挿して作る、ラオス独特のお供え物です。石段のたもとでも売られていますので、ぜひお供えしてみてください。
*三顧参拝
正座の姿勢から合掌して頭を床に擦り付ける動作を、3回繰り返すお作法です。
提供元:遠藤隆尚
地図を見る祠堂をお参りしたら、岩に刻まれたレリーフを探しましょう。祠堂背面の岩場にトリムルティが、更にその奥の切り立った崖にはゾウとフットプリント、が刻まれています。
また右手(北側)に見える仏教寺院跡を通り抜けると、たくさんの巨石とそこに刻まれたゾウ、ワニ、2匹のヘビが枠を作るレリーフが見られます。ゾウのレリーフは、天然の巨石の形状が生かされたすばらしいものです。また遥か昔、その上で神への人身供養が行われていたともいわれるワニのレリーフは、ワニ?とちょっと悩んでしまう形。それぞれ巨石の中に点在していますが、広くはないので探してみてください!
*フットプリント(Foot Print、仏足)
ブッタの足跡です。
*トリムルティ(Trimurti、三神一体)
ヒンドゥー教において、3人の神ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァが本来は1体であるとする考え。シヴァを中心に、3人の神が岩に刻まれています。
祠堂背面の左奥の断崖絶壁を目指しましょう。雨が降っていないのにもかかわらず、断崖から新鮮な水が雨のように滴り落ちています。この湧き水は聖なる水と考えられ、何と祠堂にまで水が引かれていたそうです。
祠堂内の厳かな雰囲気とは違い、ペットボトルに聖水を持ち帰る人々や、頭から聖水を浴びる人々で賑わっています。
ちょっと遺跡探検気分に浸れるワット・プー。飲物などを持参して、ゆっくりと楽しんでみてください。祠堂のある小高い丘の上から眺める景色は、最高の気分にさせてくれます。
またワット・プーでは年に数回、満月の夜にお祭りを開催しています。ラオスの伝統的な音楽にろうそくの明かりでライトアップされた境内。そして最後にはランタンを飛ばし、幻想的な雰囲気があたりを包み込みます。毎年2月に特に盛大なお祭りが開催されますが、それ以外の乾期にも数回開催されますので、MEMOの「Full moon nights at Vat Phou(英語)」をご参照ください。
*2015年は5月1日の開催日が決定しています。
■ワット・プー(Vat Phou)
営業時間:毎日8:00-18:00(併設の美術館は16:30まで)
料金:50,000 LAK
(入園料、美術館、遺跡までの電動自動車移動費込)
■アクセス
パクセから
ダオフアン市場でソンテウに乗り、約1時間。チャンパーサック下車。
チャンパーサックから
バイクをレンタルするか、トゥクトゥクをチャーターして移動します。10キロメートル約20分。チェンパサックからほぼ1本道なので、ホテルのスタッフに地図をもらって説明を受ければ、難なくたどり着けます。
パクセから日帰りもできますが、ソンテウは人が集まり次第に出発となるため、思いの外に時間がかかります。パクセ日帰りを希望する場合は、ツアーへの参加をお薦めします。日程に余裕があれば、チャンパーサックでの宿泊をお薦めします。遺跡を心ゆくまでじっくり楽しめますし、メコンに沈む美しい夕日も鑑賞できます。
また、ラオス南端にあるメコンの楽園「シーパンドン(Si Phan Don)」や、カンボジアの世界遺産「アンコール・ワット」のある、シェムリアップ行きのバスもありますので、チャンパーサックから南下するのもお薦めです。
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