戦火を逃れた10躰の朽損仏。長浜市・観音の里「いも観音」

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戦火を逃れた10躰の朽損仏。長浜市・観音の里「いも観音」

戦火を逃れた10躰の朽損仏。長浜市・観音の里「いも観音」

更新日:2015/03/10 11:00

成沢 崇のプロフィール写真 成沢 崇 名古屋仏像研究会 会長、旅ライター

滋賀県長浜市は、奈良時代や平安時代にさかのぼる多くの仏像が遺されており、「観音の里」「文化財の宝庫」と呼ばれています。

今回ご紹介する長浜市木之本町の安念寺には、綺麗に保存された仏像ではなく、どれも朽ちて原型をとどめていない仏像ばかりで「いも観音」と呼ばれています。

朽ちているからこそ感じられる美しさ。「ホトケ」を守る民衆の心。仏像が身近に感じることの出来る安念寺の「いも観音」をご紹介します。

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安念寺は集落で管理されている無住の寺院

安念寺は集落で管理されている無住の寺院

写真:成沢 崇

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奈良や京都などで見られるような大きく立派な寺院に仏像は安置されているものですが、安念寺のある湖北地方では、ほとんどが各村の小さなお堂に安置され、その地域の人々によって守られていることに特色があります。

今回ご紹介する安念寺もお堂としてはとても小さなもので、そこにお坊さんは住んでおらず木之本町西黒田の集落の人々によって管理されています。

安念寺のある西黒田は、柴田勝家の合戦で有名な賤ヶ岳の東の麓にあり、現在は10軒ほどの小さな集落があるばかり。この集落の一番奥にある長い石段を登った先に安念寺はあります。普段は写真にあるフェンスに鍵がかけられているために入れませんので、事前に観光協会さんに連絡し拝観予約をとる必要があります。

戦火を逃れた10躰の「いも観音」

戦火を逃れた10躰の「いも観音」

写真:成沢 崇

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安念寺を管理する西黒田の世話方さんに案内されるのは、小さなお堂。
お堂の扉を開けてもらうと、そこには平安時代に掘られたと思われる10躰の仏像が安置されているのですが、そのどれもが朽損仏と呼ばれるもので、手先や腕、胴体が欠けてしまい原形をとどめていないほどに朽ちてしまっています。

もともと安念寺は、この地で七堂伽藍を持つ天台宗の巨大な寺院でしたが、戦国時代には湖北地方は交通の要所であり戦略上重要なルートでもありました。姉川の合戦、小谷城の戦い、賤ヶ岳合戦など幾度となく戦乱の舞台となり社寺は兵火にあい焼失。賤ヶ岳の麓に建つ安念寺も焼失します。しかし、仏像は信仰篤いこの村の人々が川底や田の中に埋めて献身的に守ったと伝えています。

そして、江戸時代文政年間に田の中に埋められていた諸仏を村人が掘り出し、集落の手前を流れる余呉川で洗い清め、借りのお堂を建てて仏像を安置したのが今の安念寺のはじまりです。

朽損仏を守り続ける人々の信仰心に出会う。

朽損仏を守り続ける人々の信仰心に出会う。

写真:成沢 崇

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安念寺の仏像が「いも観音」と呼ばれるのは、田に埋められていた仏像を余呉川で洗い清めたことから付いた呼称で、虫食いや破損があったりと保存状態は決して良いとはいえません。

しかし、このような姿になっても仏像であることに変わりはなく、西黒田ではずっと大切にこの仏像を守り続けています。

中には姿の分からない仏像も

中には姿の分からない仏像も

写真:成沢 崇

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それぞれの仏像には「毘沙門天」や「地蔵菩薩」といったプレートが欠けられているのですが、破損状態がひどくプレートがなければどういった姿だったのか判別できない仏像もいくつか。

もともとはこのお堂に17躰を安置されていたのですが、平成十二年〜十五年の間に7躰の仏像が盗難にあい現在は10躰となっています。その為に今ではフェンスを設けたり警報機をつけたりと、西黒田の人々によって厳重に管理し、守り続けていこうと努力されています。

川遊びに「いも観音」は使われていた!?

川遊びに「いも観音」は使われていた!?

写真:成沢 崇

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これだけの仏像を大切に守り続けている西黒田の人々ですが、この仏像の保存価値が知られるまではわりとゆるい扱い方だったようで、夏になると子どもたちが川遊びをする際に、このお堂にある朽損仏を運び出して浮き輪の代わりにしたりと水遊びをしていたそうです。

昭和の初め頃にそうやって遊んでいたというのだから驚きです。
「いも観音」さんは、子どもたちを水の事故から守ってくれたのかもしれませんね。

安念寺の拝観予約は事前に奥びわ湖観光協会へ

戦火を逃れ今にその姿を伝える安念寺の「いも観音」。こちらへの拝観をご希望の際は、事前に奥びわ湖観光協会へ連絡をすると拝観のための手配をしていただけます。

奈良や京都の保存上他の良い仏像とは、また違った朽損仏の姿に湖北地方の信仰と歴史を知ることが出来るでしょう。

安念寺
滋賀県長浜市木之本町西黒田
0749-82-5909(奥びわ湖観光協会)
北陸自動車道「木之本」インターから約20分

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掲載内容は執筆時点のものです。 2012/05/16 訪問

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