奈良の仏様を一挙に拝観!「祈りの仏像〜入江泰吉、こころの眼〜」入江泰吉記念奈良市写真美術館

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奈良の仏様を一挙に拝観!「祈りの仏像〜入江泰吉、こころの眼〜」入江泰吉記念奈良市写真美術館

奈良の仏様を一挙に拝観!「祈りの仏像〜入江泰吉、こころの眼〜」入江泰吉記念奈良市写真美術館

更新日:2015/03/09 15:10

いずみ ゆかのプロフィール写真 いずみ ゆか ライター

美しき仏様の地、世界遺産の古都奈良。入江泰吉(いりえたいきち)は、「入江調」「古色」と表現される、独自の感性で撮った情感溢れる大和路の風景や仏像の作品で有名な奈良出身の写真家です。
「入江泰吉記念奈良市写真美術館」では、2015年3月29日まで企画展『祈りの仏像〜入江泰吉、こころの眼』が開催中。入江氏の心の眼を通した写真から、本来なら不可能な奈良の主な仏様を一挙に拝観することが出来るのです!

全てはここから始まった!昭和20年撮影「東大寺戒壇堂 広目天立像」

全てはここから始まった!昭和20年撮影「東大寺戒壇堂 広目天立像」

写真:いずみ ゆか

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奈良の著名な古寺は、一ヵ所にまとまっておらず、各寺院の美しい仏像全てを一日で拝観する事は不可能。しかし、入江泰吉記念奈良市写真美術館で開催中の『祈りの仏像〜入江泰吉、こころの眼』では、数時間で奈良の主だった仏像を一挙に拝観する事が可能なのです。

入江泰吉がよく訪れた14の古寺の仏像作品55点(モノクロ24点/カラー31点)、風景作品31点(モノクロ8点/カラー23点)の構成で、しかも仏像作品と古寺風景作品をあわせた展示は今回が初!

是非、入江氏が「こころの中で合掌しながらシャッターを切った」と語る作品から”仏像の持つ精神性”を感じるという、今までに無い仏様拝観を味わってみて下さい!

入江泰吉は、東大寺の旧境内地・片原町生まれ。展示も東大寺の仏像写真から始まります。
入江氏は当初大阪で活動し、文楽の写真で有名になりました。しかし戦災に遭い、昭和20年、故郷の奈良に引き揚げた際に「奈良の仏像などの文化財が戦利品として(進駐軍に)持ち去られる」という噂を耳にし、写真に記録しようと決意。結局、単なるデマだったのですが、”大和路の写真家としての入江泰吉”が誕生するきっかけになりました。

「東大寺戒壇堂 広目天立像」(写真左/昭和20年代前半撮影)は、一番最初に手掛けた仏像。全てはここから始まったのです!
入江氏が「心の奥底まで見透かされたような気がした」と語ったのも頷ける、ハッとするような眼力。
同じ「東大寺戒壇堂 広目天立像」でも、写真右の昭和50年撮影のカラー作品とは与える印象が違う点にもご注目を。

有名では無い方の吉祥天像・・・入江泰吉が魅せられた「東大寺法華堂 吉祥天立像」

有名では無い方の吉祥天像・・・入江泰吉が魅せられた「東大寺法華堂 吉祥天立像」

写真:いずみ ゆか

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吉祥天像と言えば、有名な浄瑠璃寺の秘仏や薬師寺の吉祥天画像を思い浮かべる方が多いですが、実は、東大寺にも素朴な塑像の吉祥天像がおられます。

浄瑠璃寺や薬師寺の様な華やかさは無く、衣の色はあせ、頭部や手などが欠けていますが、入江氏は、この東大寺の吉祥天像に魅せられ幾度となく通いました。
「戦災の痛手に、心身ともにうちひしがれていたころであった。フラッシュに明るく照らしだされた瞬間の、その女神の顔に若々しい生命力を感じ、歓びを覚えた」と著書に綴ったほどです。

学芸主任の木村真士さんに伺ったお話では、入江氏は仏像を”お堂に入った時の見たままの姿”で撮ったとのこと。
大げさなカメラアングルやライティングをしない、演出の無い素直な写真。それが、「お堂でみ仏に祈った時の感動=祈りの精神」を表現できないかと考え撮影した入江氏の仏像作品の魅力なのだと教えてくれました。

●毎月第2・4土曜日に作品解説あり

入江泰吉が愛し、好んだ、小ぶりで優しく女性的な仏像

入江泰吉が愛し、好んだ、小ぶりで優しく女性的な仏像

写真:いずみ ゆか

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入江泰吉は、藤原時代以降の仏像より、天平仏を好みました。
仏師たちが祈るような気持ちで彫り上げた迫力を感じて、内面的な祈りの精神が強いと感じていたようです。

中でも特に好んだのが、「秋篠寺 伎芸天立像」「興福寺 阿修羅立像」などの小ぶりで女性的な仏像。
仏像に本来性別はありませんが、著書では「興福寺 阿修羅立像」を従来言われている少年の姿というよりも、”清純な乙女のイメージ”と表現しました。

また「秋篠寺 伎芸天立像」(写真参照/昭和51年撮影)は、「その表情が深い慈愛に満ちた傑作」「悩みの多い時代に生きる憂いが漂っていて、印象深い仏像」と綴っています。
作品を観ると、確かに、まるで今から私達の話を聞いてくれようとするかの様な優しい表情と佇まい。
今回の企画展は、入江氏が特に愛した仏像を十二分に堪能出来る点が魅力でもあります。

※「秋篠寺 技芸天立像」は、頭部は創建当初の天平時代のもので、体は鎌倉時代の補作

大和路の風景と共に仏様を・・・「入江調」「古色」の魅力

大和路の風景と共に仏様を・・・「入江調」「古色」の魅力

写真:いずみ ゆか

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更に、本企画展の特徴でもある「仏像作品」と「古寺風景作品」をあわせた展示から、「入江調」「古色」と言われる入江氏独特の表現を通した奈良の魅力を感じるのも見所の一つ。

入江泰吉の独特な写真の秘密・・・それは”いかにして色を殺すか”にあります。
先ほどの木村さんによると、入江氏の作品は真夏のものは少なく、春と秋のものが多いのだとか。また雨・雪・もや・霧など気象条件を好み、夕暮れなどの時間帯を計算し撮影することで、抑えた色調(古色)にし、大和路の情感を表現した(入江調)とのこと。取り分け、しっとりとした情感が出る雨上りの作品が多いそうです。

語りかけるかの様な表情。モノクロへのこだわり

語りかけるかの様な表情。モノクロへのこだわり

写真:いずみ ゆか

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入江作品の仏像はどれも、ある時は強烈に何かを訴えかける様な、またある時は頷きながら耳を傾けている様な、そして穏やかに語りかける様な独特の表情が印象的。

その魅力の秘密を端的に示す言葉が著書にあるので簡単にご紹介します。(撮影の際にライトを使用し※、仏像にあてた時の回想を抜粋)

「ライトの角度によっては、微笑んでいたと思った顔が、憂い顔に変わったりして驚いたこともあった。仏像の表情というものは、写真のライトの様に、私達が仏像に触れる時の心のあり方、受け取り方によって、その表情も様々なあらわれを示されるのかもわからない」

また、入江氏は”モノクロ写真”に強いこだわりがあり、カラー写真へ移行した時期が遅いのも特徴です。
長い年月によって自然に溶け込んだ仏像の古色をカラーに移行してから、逆に感じるようになり、仏像の本質はカラーよりもモノクロの方が触れやすい気がすると述べています。

私達が肉眼で観る仏像とはまた違う、あえてモノクロで観る仏像・・・あなたの心のありようを映し出してくれるのではないでしょうか?

※堂内の光線では暗すぎるため

「祈りのこころ」・・・更に深く奈良の仏像を楽しむために!

最後に、木村さんがとても興味深いエピソードを教えてくれました。

入江氏は、カメラのシャッターボタンを押した後に”独特の間というか余韻があった”
それが、仏像の精神性、すなわち”祈りのこころ”だったのではないかと。

入江泰吉は、仏像を美術品ととらえるより、信仰の対象としてとらえた精神性に惹かれ、亀井勝一郎の『大和古寺風物誌』を愛読しました。更に深く楽しむために一読するのもお勧めです。
是非、本企画展を訪れてから、実際に奈良の魅力的な仏像に会いに行ってみて下さい。美術館の近くには新薬師寺や東大寺、興福寺などがありますから。
きっと今までとは違う視点で、仏様とふれあう事が出来るはずです!

※掲載写真は、取材のため許可を得て撮影。作品の撮影は禁止されていますので、ご注意下さい。

<+α情報>
■2015年3月1日から「旧入江泰吉邸」が一般公開されました。是非、併せて訪れてみて下さい。
【公開時間】午前9時半〜午後5時、月曜休館【入館料】200円

<祈りの仏像〜入江泰吉、こころの眼〜>
【開催期間】2015年1月17日(土)〜3月29日(日)
※月曜日休館
【観覧時間】午前9時30分〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
【観覧料】一般500円/高校・大学生200円/小・中学生100円

<参考文献>
■「入江泰吉 私の大和路 春夏紀行」小学館文庫
■「入江泰吉 私の大和路 秋冬紀行」小学館文庫

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/02/05 訪問

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