京都洛北、千本今出川の交差点を少々北へ上がった東側にあるのが、弘法大師・空海が弘仁10(819)年に創建された家隆山光明遍照院石像寺(かりゅうざんこうみょうへんじょういんしゃくぞうじ)である。
この寺を正式名称で呼ぶ人が少ないのは、フルネームだと非常に長すぎるから、という理由だけではない。
実は、この寺の御本尊である地蔵菩薩の御利益がとびぬけて優れており、その珍しい特徴から、通称の方が有名になってしまったのである。
遣唐使として唐に渡った空海は、持ち帰った石に自ら地蔵菩薩を彫り、人々の諸悪・諸苦・諸病を救い助けるよう祈願された。
その霊験のあらたかさに噂が噂を呼び、いにしえより参詣する人が絶えないのだとか。
さぞ大きな寺かと思われるかもしれないが、訪れてみると、通りに面した参道へといざなう参道への間口は、大人2人が両手を広げて並んだぐらい。うっかりしていると、通り過ぎてしまうほどなのだ。
赤い提灯が目印!くれぐれも、お見落としのないように。
二つ目の門をくぐると正面に見なれぬモノが目に入る。
上から下までよくよくごらんいただくと、この寺の通称にも納得していただけるはず。
そう、これはこの寺のお地蔵様の御利益を表した大きな釘抜きのオブジェなのだ。
ここの釘抜きは、てこの原理を利用した現代風のものではなく、閻魔様に命じられた鬼が罪人の舌を抜くような、いわゆるやっとこと呼ばれる形状のものである。
あらゆる苦を抜く「苦抜き」が「釘抜き」になったと聞けば納得!
見るからに強力そうな釘抜きに、御利益への期待が一気に高まること請け合い!
こんなに小さなお寺なのに、その由緒の深さはタダモノではない。
何しろここには二つの重要文化財が存在するのだ。
ひとつは、本堂背後の小堂に奉られた「石造阿弥陀如来及び両脇侍像」である。
元仁2年(1225年)に完成されたというこちらは、写真では、真中の阿弥陀様のみであるが、両脇に観音・勢至の菩薩様を従え、前には多くのお地蔵様をはべらせる、風格漂う御姿である。
もうひとつは、同じく小堂内向かって右側に立つ石造弥勒菩薩立像である。こちらの文化財指定は2010年と、最近のことであるが阿弥陀様同様の風格を持つ、ありがたい仏像なのである。
忘れず参拝していただきたい。
本堂の裏側に広がるのがこの光景。
釘抜きと釘を額にしたものが、一面に張り付けられているのだ。
これは、苦抜きの祈願をした方々が、願成就して苦が抜けた暁に、釘抜き地蔵菩薩様に御礼として奉納したものである。ご覧になっているのは、勿論そのごく一部。こちらには、まだ多くの奉納額が納められている。
世にある様々な苦しみを乗り越えてきた人々の、切実な祈りと命の力強さを感じよう。
本堂内で行われる御祈祷は、ご住職にお願いすれば誰でも受けることができる。病気や怪我などの苦はもちろん、おおよそ苦を感じる事柄ならばなんでも抜いていただける。
その上、このお寺は御祈祷だけじゃない。
ご住職は、悩みを持ってこの寺に訪れる多くの方々のために、臨床心理士の資格を取得され、心の相談にも応じてくださるのだという。
まさに至れり尽くせりの細やかなケアで、大きな苦から小さな苦まで、苦のことならなんでもお任せの、ありがたいお寺なのである。
あなたも参拝だけでなく、御祈祷や人生相談をご住職にお願いしてみてはいかが?
こちらのお参りには、独特の作法がある。
まず、本堂の脇にある竹串を、で自分の年齢(数え年)の数だけ手に持ち、お堂の周囲を願をかけながら、一周するごとに一本ずつ返してゆくというもの。年配の方ほどハードになるが、抱えてきた苦の多さを思えば仕方のないところ。
その際、本堂正面に奉られているお賓頭廬(びんずる)様の、自分が苦を抜きたいと思う箇所を撫でる。病気や怪我でない悩み事や、心配事ならば、頭や胸を撫でるのも良いとのこと。
また大きな独鈷杵(どっこしょ)や宝珠(ほうじゅ)などが置かれているので、前を通る際に撫でると一層御利益をいただけるそう。
お参りの作法については、ご住職はもちろん、よく来られるご近所の方に聞いても親切に教えていただけるので安心して尋ねられるとよい。
あなたも是非、アットホームな「釘抜地蔵さん」で人生の苦を根こそぎ抜いてラク(楽・落苦・luck)を手に入れよう。
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(2025/1/22更新)
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