写真:吉川 なお
地図を見るラッフルズ・ホテルの創業は1887年。ペルシャ出身のアルメリア人、マーティン・サーキーズとティグラン・サーキーズの兄弟によってわずか10室のバンガローからスタートしました。1869年のスエズ運河の開通でアジアを訪問する人が増えることを見越したサーキーズ兄弟は、まず1885年に貿易中継地として栄えていたマレーシアのペナン島に「イースタン・アンド・オリエンタル・ホテル」を開業し、次に自由貿易港として急速に発展していたシンガポールに着目。そこで手がけたのがこのラッフルズ・ホテルでした。
開業当初は目の前がビーチであったため「ビーチハウス」という名前でしたが、やがて「近代シンガポールの父」と呼ばれるトーマス・スタンフォード・ラッフルズ卿の名前を冠して改修と拡張を続け、1899年には現在の原型となるコロニアル様式の建物が完成しました。
白亜の優雅なたたずまいや細部まで行き届くきめ細やかなサービスは、瞬く間に「スエズ運河以東で最もすばらしいホテル」との高い評価を得、多くの名だたる著名人が常宿とする格式あるホテルに成長しました。幾度かの経営再建や第二次世界大戦時に日本軍の宿泊施設「昭南旅館」になるなど苦難の時期もありましたが、1946年にホテルとして再オープンを果たし、開業してちょうど100年となる1987年にシンガポールの歴史的建造物に指定されました。多くの人が1度は宿泊してみたいと思う憧れのホテルとして、いまもなお注目されています。
ビーチロードに面する正面玄関では、エキゾチックな装いのドアマンが宿泊客を笑顔で迎えてくれます。
しかし、この正面玄関を通過できるのはレジデンスと呼ばれる宿泊客だけで、そうでない人はこの先のロビーにも入ることができません。この点が他の多くのホテルと一線を画するところで、宿泊客と公共エリアを利用する訪問客との境界線をはっきり分けることによって、ラッフルズを選んだレジデンスに静かでゆったりとした時間を過ごしてもらおうと配慮しています。
これによって、レジデンスはリラックスして過ごせると共に、ラッフルズのゲストという優越感をも味わうことができます。
玄関の扉を開けると、目の間に広がるのは風格あるロビー。1989年から2年間かけて当時の趣を残しつつ全面改装され、レジデンスを迎え入れます。
写真:吉川 なお
地図を見る写真:吉川 なお
地図を見るラッフルズは4つのウィングで構成され、客室103室は全てスイートルームで、それぞれ異なる内装になっています。うち12室はかつて滞在した著名人の名前を冠したパーソナリティ−・スイートで、作家のサマセット・モームや喜劇王チャーリー・チャップリン、俳優ジョン・ウェインなどが使用した家具や調度品がそのまま残され、肖像写真や著作物などが展示されています。
一番リーズナブルなコートヤード・スイートでも広さは58平方m。創業当時のままの高さ4mの天井と共用ベランダ、広いベッドルームに続いてパーラーとダイニングエリアがあり、ドレッシングエリアと独立したシャワールームとバスルームの4つのエリアで構成されています。チーク材の床にはオリエンタル風のカーペットが敷かれ、年代を感じさせるエレガントな調度品で部屋全体がシックにまとめられています。
ハウスキーピングは昼間と夕方の1日2回で、就寝のためのターンダウンサービスもなされます。また快適な睡眠のために数種類の枕が用意されており、ピローメニューの中から選ぶことができます。室内装飾で歴史を感じたのは、スイッチ部分がベル状の押しボタンになっているところ。現代ではなかなか見られない造りです。
写真:吉川 なお
地図を見るチェックインを済ませると、ウェルカムドリンクとしてシンガポール・スリングが振る舞われます。これはこのホテルのバーテンダー、ニャン・トン・ブーンが1915年に生み出したジンベースのカクテルで、本家本元のオリジナルカクテルはホテルアーケード2階にある「ロング・バー」でも飲むことができます。シンガポールスリングと合わせて卓上のピーナッツをつまみ、むいた殻はフロアに捨てるのがこのバーの流儀となっています。
落ち着いた優雅な部屋での時間をさらに快適にしてくれるのは、バトラーによる執事サービス。観光案内はもちろんのこと、靴磨きや飲み物のセットなどきめ細やかなおもてなしを24時間体制で受けることができます。日本人のバトラーも常駐しているので、言葉の心配もありません。
写真:吉川 なお
地図を見る本館1階、ロビー横にある「ティフィンルーム」はホテル内で最も古いレストランで、毎日午後3時から5時30分までビュッフェスタイルのハイティーが楽しめます。人気があるので、予め予約した方が無難です。
3段トレーに並ぶのはスイーツやケーキ、サンドイッチなど、これ以外にスコーンや点心、マフィン、フルーツなどが自由にいただけます。紅茶は1種類のみ、ビッフェの種類は少ないものの、コロニアル調の美しい内装の中で過ごす午後のひと時は、シンガポールのよき思い出となることでしょう。
レジデンスには、ルームサービスまたは専用ラウンジでのアフタヌーンティーも用意されています。
「ティフィンルーム」では午前6時30分から10時30分まで朝食もいただけます。ビッフェに加え、アラカルトメニューからお好みのものを別にオーダーできるので、満足度が高くお勧めです。
憧れのラッフルズ・ホテル。宿泊料金はやや高めではありますが、滞在中はその料金に見合った至福の時間を過ごすことができます。
宿泊しなくても、上記の「ティフィン・ルーム」や「ロング・バー」や他のレストラン、隣接するラッフルズ・ホテル・アーケードを訪れるだけでも、世界を代表するホテルの片鱗をうかがい知ることができますよ。
あなたもラッフルズ・マジックにかかって、シンガポールで夢のような時間を過ごしてみませんか。
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この記事を書いたナビゲーター
吉川 なお
台湾の台北市に住む専業主婦の吉川なおです。台湾生活はもう8年ですが、常に新しい発見のあるこの国が大好きです。在住者だからこそ知っている生情報やお薦めのレストランなど、台湾の旅がより思い出深いものになる…
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