写真:藤田 聡
地図を見る山代温泉「あらや滔々庵」の玄関を入ると、最初に目に入るのが、魯山人の行燈「武蔵野」と、ヤタガラスの衝立です。魯山人が掘った「あらや」の看板も、フロントにあります。
ロビーには魯山人の九谷焼も展示され、庭には加藤清正が朝鮮から運んだと伝わる石灯籠も。玄関ロビーだけでも美術館や博物館のようですが、館内至る所が同様のアートな宿です。
美食家として知られる魯山人ですが、本来は書家で、山代温泉滞在中に九谷焼の窯元に弟子入りして、陶芸家にもなります。美食で知られる加賀の山海の幸も、魯山人を美食家たらしめた要因に他なりません。
山代温泉は魯山人の第二の故郷であり、中でも魯山人の作品が多く残る「あらや滔々庵」は、魯山人の宿と呼べる程です。
写真:藤田 聡
地図を見る「あらや滔々庵」は鉄筋コンクリート造りですが、内装の一部は旧館から移築され、その歴史を伝えています。
その代表が「御陣(おちん)の間」で、魯山人も滞在した大聖寺藩主ゆかりの客室です。
床の間の設えは随時変わりますが、写真は魯山人の作品「金泥梅下絵禅句色紙」(1956年)が掲げられた様子。
紅殻(べんがら)塗りの朱壁に、漆が施された天井と柱という派手な内装を、裏山の緑が落ち着かせる、絶妙なコンビネーションが魅力です。
写真:藤田 聡
地図を見る「あらや滔々庵」には、日帰り入浴や日帰り滞在のプランは無く、宿泊者専用です。
宿泊者だけの密かな楽しみが、有栖川山荘。名前の通り、皇族用に建てられた離れが、夜はバーラウンジに大変身。照明はローソクの明かりと、僅かな電球だけ。まさに非日常の、幻想的な雰囲気が魅力です。
アート作品も多数展示され、床の間には魯山人の大きな掛け軸「起清風」(1950年)が鎮座。
一度味わったら、有栖川山荘に行く為に「あらや滔々庵」に泊まりたいと思ってしまう程です。
写真:藤田 聡
地図を見る「あらや滔々庵」の大浴場「原泉閣」には、特別浴室「烏湯」が併設されています。
烏に発見されたと伝わる、山代温泉の由来に基づく命名で、内部が黒い斬新な浴室。ミストサウナのように蒸気で満たされ、温度の異なる二つの湯船があり、両側の窓から坪庭の景色を望みます。
写真は、坪庭から烏湯を見た様子。浴場の中に白い椅子が二つあり、向こう側の坪庭の石のオブジェも見えます。
この様子だけでも、どこかの現代美術館に見える、アートな宿のアートな浴場です。
写真:藤田 聡
地図を見る「あらや滔々庵」の脱衣場は照明が落とされ、ランプシェードの複雑な模様が周囲に広がり幻想的。季節により、窓が開放され半露天状態になっており、驚かされます。
石垣や石灯籠のある庭も見え、重厚感と半露天の開放感を同時に感じる、独創的で芸術的な脱衣場に感動。脱衣場に感激する宿なんて、滅多にありません。
館内にさりげなく置かれた椅子も、有名デザイナーによる高級な作品ばかり。
浴場入口には魯山人の額が掲げられ、セルフサービスの飲み物も楽しめ、湯上がりまでアートに包まれます。
山代温泉「あらや滔々庵」は、美食も有名な宿。
北陸でも群を抜く人気と実力を兼ね備え、某口コミサイトでも、石川県の旅館で2位にランクされる程です。
日本屈指の高級温泉旅館らしく、温泉や食事など、あらゆ要素が非常に高いレベルで揃う宿で、その魅力は到底語り尽くせません。
「あらや滔々庵」の多彩な魅力の中でも、館内でアートを感じる場所を厳選して紹介しました。
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この記事を書いたナビゲーター
藤田 聡
「源泉かけ流し」にこだわる、泉質重視の温泉研究家。温泉旅行検定試験2年連続日本一で、温泉旅行博士の称号を獲得。日々、温泉や周辺観光地の取材・撮影を行い、国内旅行の奥深い魅力を各種メディアで発信中!温泉…
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