「震災を経験するまでは、日々生活することは、あたりまえ。生きていることに何の疑問も覚えず、それがこれからもずっと続いていくと思っていた。しかし、3月11日を境に、自分は一人で生きているのではなく、いろいろな人の力を借りて、生かされていることに気づかされた。そして、生き残ったものとして、私が見てきた現実を伝えることが使命だと思っている」
そう語るのは、オーナーシェフの末永賢治さん。宮城県女川町出身で、東日本大震災の折、奇跡的に津波から難を逃れた方です。
賢治さんは、女川で経営していた店や自宅を津波で流され、全てを失いました。そんな賢治さんのもとへ、いち早く駆けつけたのは、高山に住む友人たちでした。
その友人たちの勧めで、高山への移住を決意。移住先の高山では多くのボランティア、市民が温かく迎えてくれたということです。
そんな賢治さんは、廃業していたレストランをそのまま借り受け、新たにレストランをオープンされました。それが、復興レストラン「女川すえひろ」です。
賢治さんは、シェフとして腕を振るう一方、講演の依頼があると快く引き受けます。今までに、招かれた講演は30回近く。そんな賢治さんは、周囲の人々から「震災の語り部」と呼ばれています。
また、賢治さん自身が大震災で全てを失った被災者であるのにも関わらず、故郷女川への支援を継続。自らボランティアとして、被災地に出かけたり、店内に募金箱を置いたりするなど、精力的に活動。そんな姿に、多くの人が共感しています。
レストランは、高山市国府町の「飛騨国府特選館あじか」の一画にあります。
店内には、週刊誌や新聞の代わりに東日本大震災に関する本や写真集が置かれ、宮城県の特産品の販売コーナーが設けられています。また、喫茶コーナーの背面や店の前には、支援を申し入れた地元の画家が描いた絵が飾ってあり、店内に和やかな雰囲気を醸し出しています。
そんな店内は、接客担当の末永とし江さん(賢治さんの奥さん)が笑顔で迎えてくれ、いつも温かい空気に包まれています。
とし江さんはお客さんの話にも耳を傾け、時には、お客さんと世間話で盛り上がることも。とし江さんの人柄が店内を明るく、また、楽しくしているのです。そんな「女川すえひろ」は誰からも愛される、とってもアットホームなレストランです。
この店には、地元の人だけではなく、宮城県など東北各地から高山近辺に避難している人々、復興支援をしている人々が立ち寄り、宮城県の情報交換の場となり、コミュニティセンターとしての役割りを果たしています。
また、いくつかのイベントもここでは行われて来ました。ミニコンサート、講演会、映画の試写会、サンマ祭りなどです。サンマ祭りでは、駐車場が会場となり、宮城から直送された新鮮な3000尾のサンマが来場者に振る舞われました。
これらのイベントは、賢治さんたちの「地域に開かれたレストランにしたい」という思いがあって、ボランティアや地域の人々の協力で実現したものです。
油麩丼は、カツどんのカツの替わりに油麩を使ったものです。この店では、宮城県産の油麩、飛騨産のなめこ、野菜、米を使っています。だし汁を吸った油麩となめこなどに絶妙にからむ半熟の卵、そして飛騨産の米、それらが美味しい味を作り出しています。また、思ったよりあっさりしており、一口食べると、ほっとした気持ちになります。
この「仙台油麩丼」は宮城産の油麩と飛騨産のなめこ、野菜が見事にコラボされているのです。今、店を訪ねた人々が一度は口にする、人気のメニューとなっています。私の一押しのメニューです。
実は、この「仙台油麩丼」には賢治さんのある思いが込められています。お世話になった高山の人々に感謝したい、故郷女川を忘れたくないという思いから、仙台油麩と飛騨の食材を使った「仙台油麩丼」をメニューに加えられたのです。
「仙台油麩丼」は、高山と女川を結ぶ架け橋と言っていいでしょう。そんな「仙台油麩丼」を食べながら、一日も早い復興を願う人々に思いを馳せてみませんか。
また、シフォンケーキ、チーズケーキなどのケーキ類もお勧めです。
震災から2年、復興レストラン「女川すえひろ」は、飛騨国府になくてはならない店として定着しつつあります。エールを送るため、飛騨路の旅の際、立ち寄ってみませんか。あなたが、ここへ立ち寄っていただくことが、復興支援になります。
復興レストラン「女川すえひろ」
営業時間 10:00〜16:00
定休日 月曜日
食事を終えたら、隣接する飛騨国府特選館「あじか」にも、是非、立ち寄ってみましょう。
「あじか」の最大の魅力は、新鮮な旬の野菜を安価で買うことができることです。また、野菜の多くは、地元などの農家が精魂こめて作ったもの。有機栽培で作られていますから、とっても美味しく、安心して食べることができます。店頭に並べられたニンジンを試食させてもらったことがありますが、口の中に広がった甘さは格別でした。
今、「あじか」には地元の人はもちろん、県外からも野菜を買い求めに立ち寄る人が多いとのことです。
手作りの惣菜も人気。飛騨の食材を使って作られた各種の惣菜は、あの懐かしい「おふくろの味」そのものです。そのため、午前中に大半が売り切れるということです。
その他、飛騨の特産品、乳製品、アップルパイ、野菜の苗などを買うことができます。
この「あじか」の支配人さんも、「女川すえひろ」の大ファン。お勧めのメニューは、唐揚げ定食と味噌焼きおにぎりだそうです。
飛騨国府特選館「あじか」
営業日 1月〜 3月 9:00〜16:00
4月〜12月 8:00〜16:00
定休日 月曜日
復興レストラン「女川すえひろ」がある飛騨国府は自然に恵まれた歴史と文化の町です。
桜野公園、宇津江四十八滝、花の森・山野草花園、こう峠口古墳、大塚古墳、阿多由太神社、広瀬城跡、高堂城跡など、多くの見どころがあります。
私のお勧めの観光スポットは、宇津江四十八滝、安国寺経蔵(写真)です。
宇津江四十八滝は、全国自然100選地、岐阜県名水50選地に選定された県立自然公園です。渓谷沿いにある大小無数の滝とブナ、ナラ、クルミ等の広葉樹が四季を通して、美しい景色を創り出しています。
安国寺経蔵は、飛騨地方唯一の国宝に指定された建造物です。応永15年(1408年)に建立された唐様素木造りの簡素な建物で、日本の数少ない国宝経蔵(法隆寺経蔵、唐招提寺経蔵、安国寺経蔵)の一つです。経蔵内には、経本を納めた回転式の八角形の輪蔵があります。回転式のものとしては日本最古のものです。
安国寺では、住職夫人が寺や経蔵の説明をわかりやすくしてくださいます。とても話題が豊富なので、楽しく聞くことができます。是非、立ち寄ってみましょう。
飛騨国府の自然や文化財を訪ねる旅も素敵です。グルメの旅の後は、自然散策、歴史散歩をお楽しみくださいね。また、旅で疲れたときは、宇津江四十八滝の近くにある「しぶきの湯 遊湯館」に立ち寄って疲れを取ってみてはいかがでしょうか。
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