ギフチョウの舞う山、春の相模原市・石砂山に登ってみよう

ギフチョウの舞う山、春の相模原市・石砂山に登ってみよう

更新日:2015/03/30 13:45

鷹野 圭のプロフィール写真 鷹野 圭 首都圏自然ライター
ギフチョウという蝶をご存知でしょうか? 春先から初夏の里山にのみ姿を現し、「春の女神」と呼ばれる美しいアゲハチョウです。日本の固有種で、自然豊かな環境でしか見られない希少種ですが、実は関東圏でもいくつかの場所で観察することが可能! その一つが、神奈川県相模原市にある石砂山(いしざれやま)です。相模湖から程近くにあるこの山ではギフチョウの保護活動が行われており、登山がてら毎年多くのファンが訪れます。

本格的なハイキングを楽しめる山。山道から望む景観美は圧巻!

本格的なハイキングを楽しめる山。山道から望む景観美は圧巻!

写真:鷹野 圭

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石砂山は標高約578メートル。決してそれほど高い山ではありませんが、なかなか起伏が激しく歩きごたえのあるスポットです。この辺りには複数の山が点在し、石砂山を含めて「藤野15名山」と呼ばれています。写真は石砂山の一角から見下ろした風景ですが(写真下部の草原はゴルフ場です)、ご覧の通り四方八方を山に囲まれており、ここが神奈川県内であることを一時忘れてしまうほど。それだけに空気が美味しく、森林浴やトレッキングにはピッタリでしょう。

富士山のような高山ではないものの、道中には飲み物を買えるような場所はなく、事前準備は必須です。一方で山道から変に逸れたりしなければ道に迷うこともありません。ベテランの方には物足りないかもしれませんが、これから山歩きなどを始めたい方にはちょうどいいかもしれませんね。

山道沿いに生える、ユニークな山野草にも注目しよう

山道沿いに生える、ユニークな山野草にも注目しよう

写真:鷹野 圭

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石砂山の山道は深い森に囲まれる一方、道端には草本植物の数も多く、いわゆる生物多様性に恵まれた雑木林環境が広がっています。春、ふと草むらに目を向けると、都会では目にすることのない不思議な植物を見つけることもあります。写真の植物はテンナンショウといい、蓋のついたツボのような不思議な形状が特徴の山野草。決して華やかな花ではありませんが、インパクトのある外見で、きっと一度見たら忘れられないことでしょう。見た目からは想像がつかないかもしれませんがサトイモの仲間で、近年は自然豊かな山林でしか姿を見ることができません。

この他にも、春の石砂山では日本在来の様々な山野草が花を咲かせ、登山客を楽しませてくれます。春の象徴である可愛らしいスミレや、野生ランの代表格であるシュンラン、そして春先にのみ紫色の可憐な花を咲かせる人気者のカタクリなど、花壇のように「一面のお花畑」とはいきませんが、野生に生きる多彩な草花を観察できます。

近年、里山の減少によって、こうした植物もごく限られた地域でしか見られなくなってしまいました。ここ石砂山は、そうした貴重な山野草が自分の力で生き続ける関東地方ではかなり稀有なスポット。ぜひ直接山道を歩いて、その魅力を体感してみましょう。「これほど日本の自然は面白いのか?」「関東にこんなスポットがあったのか!」と、驚かされるはずです。

ちなみに、ギフチョウの幼虫が葉を食べるカンアオイという植物も見られます。産卵のためにギフチョウが訪れることもあるかもしれませんが、山野草の中でもとりわけ花が地味ですので(汗)見つけるのは困難かもしれません。

木々の間を縫うように舞う、ギフチョウの姿を見落とすな!

木々の間を縫うように舞う、ギフチョウの姿を見落とすな!

写真:鷹野 圭

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写真のチョウがギフチョウです。

よく街中で見かけるアゲハ(ナミアゲハ)よりも若干小さく、身体は、寒さに耐えるためかマフラーを巻いたかのようにモコモコの毛に覆われています。翅はストライプ模様に赤と青の斑点がアクセントとなっており、目を見張るほど華やかというわけではないですが、独特の美しさを持つチョウです。今では相模原市藤野の春の風物詩となっており、このチョウを写真に収めるためにはるばる県外からたくさんのファンが訪れ、石砂山を登るのです。石砂山では地元の皆さんの手でギフチョウの保全活動が進められており、幼虫の食草となるカンアオイ共々大切に守られています(ですので、どんなに美しくても捕まえたりするのはご法度です!)。

ギフチョウは3月下旬から5月、長い場合には6月頭まで姿を見ることができますが、年によってかなり差がありますので、事前に春先からWebサイトなどでよ〜くチェックした方がいいでしょう。特に雪解けの早い暖かい年には、かなり早い内から舞い始めます。

石砂山の頂上周辺を軸に、基本的には山の全域に生息していますので、山道を歩いていれば自然とどこかで出会える確率が高いです。主にスミレやカタクリなどの花で蜜を吸いますので、こうした花の群落を見つけたら一度そこで待機してみるのもベター。食事中はジッとしていますので、撮影や観察にはうってつけです。季節限定の美しさを堪能しましょう。

まだまだいます! 春先ならではの生きものたち

まだまだいます! 春先ならではの生きものたち

写真:鷹野 圭

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長く厳しい冬が過ぎると、石砂山ではギフチョウだけでなく様々な生きものが姿を現します。写真はスギタニルリシジミという、指先サイズの可愛らしいシジミチョウの仲間。似たようなチョウは街中でもよく見かけるかと思いますが、よくよく観察すると微妙に模様が違ったりします。まだ春になりたてで羽化したばかりなのか、動きが緩慢でボーッとしている様子……。写真のように、手に乗せてもなかなか飛び立たないなんてことも多々あります。

他にも、その名の通り深い山に生息するミヤマ(深山)セセリ。ふわふわの長い毛に覆われて、ストローのような口で飛びながらスミレの蜜を吸うビロードツリアブなど、早春の一時にしか見られない昆虫たちがたくさん姿を現します。運が良ければ、活動を始めたイタチやタヌキなどに出会えるかも?

山奥ならではのスイーツをめしあがれ★

山奥ならではのスイーツをめしあがれ★

写真:鷹野 圭

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石砂山山道からやや歩いたところ、県道517号沿いにある「山のはちみつ 本店 ほくと蜂舎」は要チェック! ここでは店名の通り地場産のハチミツを販売しているのですが、驚くべきはその種類の多さ。王道のレンゲやアカシアなどを始めとして、様々な花から採取されたハチミツを取り扱っており、中にはクリなどのちょっと珍しい(そしてちょっぴり癖の強い)蜜も……。一括りにハチミツといっても、花によって甘さも風味も全く違います。色々と食べ比べができますので、ぜひ一度立ち寄ってみてください。

写真のようにソフトクリームにかけて食べてもGood! 他にも、名物としてハチミツ入りのたい焼きやカステラなども販売されています。ナチュラルで身体に優しい甘みを、この機会に色々とお楽しみください。

季節限定につき、お見逃しなく!

ギフチョウが多くのファンを獲得しているのは、その美しさや希少性はもちろん、春の一時しか姿を見られないという「季節性」にあると言えます。ギフチョウを愛でることで、本格的な春の訪れを実感できるのです。明確な四季のある日本ならではの嗜みといえるかもしれませんね。

もし見逃したら、極端な話来年の春までお預け……。
登山がてら、季節限定の自然の美を探してみませんか?

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/04/05 訪問

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