写真:下川 尚子
地図を見る伊勢神宮へのお参りというと、外宮へお参りしたあと、内宮へお参りするのが古来からの習わし。ですが、お伊勢参りが人気を集めた江戸時代より、外宮、内宮へ参ったあと、朝熊岳金剛證寺へ参詣するのがよいとされてきました。その理由は、金剛證寺が伊勢神宮の北東に位置し、鬼門を守る寺として栄えてきたからです。
朝熊岳金剛證寺があるのは、伊勢と鳥羽の間にまたがる朝熊山の山頂付近。伊勢神宮、内宮からほど近くの「伊勢志摩スカイライン」入口より、車で10分ほど走ったところに位置します。公共交通機関を利用する場合は、近鉄五十鈴川駅からタクシー利用となります。
現在は車でアクセスでき非常に便利ですが、江戸時代には、たくさんのお伊勢参りの人々が徒歩で山道を上って参詣していました。現在も山道のルートは存在しています。近鉄朝熊駅から登山道を経由し、約2時間半でアクセスできるとのこと。もしも、当時の人々のお伊勢参りを体感したいなら、ハイキング気分で上ってみるのもひとつですね。
金剛證寺の入口である「仁王門」をくぐり境内に入ると、写真の太鼓橋がかかった池があります。この橋は聖地と俗界との結界を表しているとのこと。そこからさらに階段を上ると、本堂の摩尼殿があります。
写真:下川 尚子
地図を見る朱塗りが美しい本堂の摩尼殿は、国の重要文化財に指定されています。金剛證寺の本堂は、慶長年間に火事によって失われていますが、1609年に姫路の城主である池田輝政によって再建されました。そののち、徳川五代将軍綱吉の母柱昌院によって改修され、今に至ります。
御本尊は日本三大虚空蔵菩薩の一つ。20年に一度、伊勢神宮が式年遷宮を迎える翌年にご開帳されることとなっています。伊勢神宮の式年遷宮が2013年、こちらの御開帳は2014年に行われました。
写真:下川 尚子
地図を見る本堂をお参りしたあとは、北隣に位置する明星堂へ。伊勢神宮の鬼門除けのため、明星天子をお祀りしている場所です。明星天子は虚空蔵菩薩の化身。明星は日月星の三字よりなり、国土安泰、智恵成弁の仏神です。
金剛證寺は、長い歴史のなかで隆盛と衰退を繰り返しながら現在に至っています。その歴史は古く、欽明天皇の頃、暁台上人によってこの明星堂が建てられたことが始まりだといわれています。その後、空海により一時は密教修行の大道場として栄えますが、しだいに衰退します。
そして1392年に鎌倉建長寺5世の仏地禅師、東岳文c(とうがくぶんいく)がこの衰退をなげき、再興に尽力したことにより、ふたたび栄えることとなります。また、これにより、真言宗から臨済宗に改宗し、禅宗寺院となりました。
そして、現在のように伊勢神宮の鬼門を守る寺として知られるようになったのは、室町時代以降のこと。金剛證寺の位置が伊勢神宮の北東に位置することから、伊勢神宮の鬼門を守る寺として、伊勢信仰と結びつくこととなります。
江戸時代には伊勢神宮と並んで重視され、徳川幕府から援助されたこともあり、多くの人々が伊勢神宮に参宮する際に、一緒に参詣するようになりました。
その後、第二次世界大戦中に入山が禁止されたことや、当時のアクセスルートだったケーブルカーが廃線になったことで衰退しますが、1964年、伊勢志摩スカイラインの開通により、ふたたび多くの人が訪れるようになり、今に至っています。
写真:下川 尚子
地図を見る写真は、金剛證寺の「奥の院」に続く道。本堂から明星堂を越え、さらにしばらく歩いた先に、「極楽門」という門があります。その門を越えると広がるのが、この光景。
両脇に故人を弔うための卒塔婆が立ち並び、それが延々と奥の院まで続いていきます。ぎっしりと、おびただしい数の卒塔婆がそびえ立つさまは、一種独特の空気を感じる場です。
近隣では、朝熊山は霊場ととらえられており、死者の魂の行く場として考えられてきたそうです。江戸時代以降、朝熊山の付近では宗派を問わず、葬儀の後に金剛證寺奥の院に卒塔婆を立て、供養を行うことが習わしとされてきました。これを「岳参り」「岳詣(たけもうで)」と呼んでいます。
現在は鬼門を守る寺として知られている金剛證寺ですが、地元ではまた違った姿として知られます。
写真:下川 尚子
地図を見る伊勢神宮の鬼門を守る寺として、金剛證寺をご紹介してみましたが、いかがでしたか?
朝熊山につきましては、関連MEMO「お伊勢まいらば朝熊をかけよ」〜朝熊山頂展望足湯”でも紹介していますので、あわせてご参照ください。お伊勢参り後のドライブコースとしてもオススメです。
2013年に行われた式年遷宮は20年に一度の大きなイベントとして注目を集めました。ですが、伊勢神宮は日本人の心のふるさとと言われる場所。式年遷宮が終わった今も、多くの人が訪れています。
お伊勢参りをさらに充実したものとするため、江戸時代の人々にならって、お伊勢参りの際には朝熊山にも立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
なお、伊勢神宮の参拝ガイドは下記「関連MEMO」でもご紹介しています。お伊勢参りを計画中の方は、参考になさってみてください。
この記事の関連MEMO
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(2023/12/6更新)
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