13万年前は海底!千葉印西「木下貝層」で万葉集を紐解く?

13万年前は海底!千葉印西「木下貝層」で万葉集を紐解く?

更新日:2015/04/10 16:29

井伊 たびをのプロフィール写真 井伊 たびを 社寺ナビゲーター、狛犬愛好家
約12〜13万年前、関東平野には「古東京湾」という大きな海がひろがっていた。ここ「木下貝層」で、おびただしい数の貝殻を含む地層を目の当たりすると、印西市周辺もその一部だったということが体感できる。

隣接する「木下万葉公園」は、四季折々の花木を愛でながら、万葉人の心にふれやすく工夫されたレイアウトがニクい。地植された花木を眺めながら、その花木を詠み込んだ歌を読めば、詠み人のこころにより近づける。

国指定天然記念物「木下貝層」を見上げる

国指定天然記念物「木下貝層」を見上げる

写真:井伊 たびを

地図を見る

「木下(きおろし)貝層」は、千葉県北部から茨城県南部に広く分布しており、印西市木下(きおろし)で最初に調べられたので、この名前がつけられた。この貝層は、約12万〜13万年前の地層。その頃の関東平野には「古東京湾(ことうきょうわん)」と呼ばれる大きな内湾が広がっており、その内湾の波浪や潮流によって貝殻が集められ堆積したものが「木下貝層」だ。

近づいて見ることのできる展望台より貝層を見上げる

近づいて見ることのできる展望台より貝層を見上げる

写真:井伊 たびを

地図を見る

ここに見られる貝化石は、タマキガイ、バカガイ、キオロシアサリ、サラガイ、マメウラシマガイなどだ。また、このほかにカシパンウニもよくでているとか。これら貝類と同一の種類は、現在でも海岸や海岸より少し沖合に生息している。

この「木下貝層」は、当時の浅海に堆積した化石や様々な堆積構造を含むだけでなく、関東平野の地層研究の端緒となった。

万葉の花木を愛でる「木下万葉公園」

万葉の花木を愛でる「木下万葉公園」

写真:井伊 たびを

地図を見る

「木下(きおろし)万葉公園」は、国指定天然記念物である「木下貝層」を中心に、万葉の緑に囲まれ、高低差約20mの丘陵を利用した約2.6haの公園である。高台へは直線の階段の他、歩行に自信のない方に優しい緩やかなスロープもある。丘の上から木下の町並みや、利根川、我孫子市、さらに天気のいい日には筑波山はもちろんのこと、遠くに富士山も望める。

丘の上には、サトウハチロウ作詞の「木下音頭」の詩碑がある。
その四番に、次のように刻まれている。

朝のひかりに 筑波をおがむ
つくば晴れたで 心もはれた
入陽こいしや 富士さえ映える
今宵あの娘と またまた踊ろ

明らかにこの丘で詠んだ詩だということが分かる。

園内を散策しながら、あなたも一句詠んでみては?

園内を散策しながら、あなたも一句詠んでみては?

写真:井伊 たびを

地図を見る

丘の上の万葉の緑に囲まれた、心地よい風の吹き渡る公園のイメージに加え、「日本古来の木々が自然に植えられていて、のんびりと散策していると、ふと万葉人の一句がよみがえるような、そんな公園になったら」という意味が込められ「木下万葉公園」と名付けられた。

13万年前は海低だった地で、万葉集の一句を味わう

13万年前は海低だった地で、万葉集の一句を味わう

写真:井伊 たびを

地図を見る

万葉集には四季折々の花木が詠み込まれている句が多い。ここ「木下万葉公園」では、そんな中から選りすぐりの数句がかかげられ、その句に詠み込まれた花木が地植されている。その花木を愛でながら、一句を味わえば遠き万葉人の心を偲ぶことができる。

ちなみに、こちらの一句は万葉集・巻10ー1895にある(作者不詳「柿本人麻呂歌集」)の一句である。風にゆれる「さきくさ」(現代名:イカリソウ)を愛でながら、読み進めば句にふれる趣もひと味ちがうことだろう。

春されば まづ三枝(さきくさ)の 幸(さき)くありて 後にも逢はむ な恋ひそ吾妹(わぎも)

春が来ればまず咲き始める、このさきくさのように、無事でいたならまた巡り逢えるのだから、そんなに恋しがらなくてもいいんだよ

と恋しがる妻を思って詠んだ一句だ。

おわりに

こちらは、JR成田線・木下駅から徒歩10分足らずで訪れることができる。とてもアクセスのいい公園だ。

さて、日本列島に人類が住みついたのが数万年前、万葉人が生活を営んでいた頃は、せいぜい千数百年前。ところが、古東京湾の海鳴りが海面を駆けめぐっていた頃は、実に十数万年前のことだ。大自然の時間の軸からみれば、われわれの人生なんてほんの一瞬のできごとでしかない。

木下貝層により「地理学」や「地層学」、四季折々に愛でる花木により「生物学」、万葉の歌にふれることで「古文学」などが、あらためて同時に学べるスポットである。一箇所で、一石何鳥をも手にする一日をあなたにプレゼントしよう。

こちらは、特にお子さま連れのご家族にオススメのスポットだ。

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/03/31 訪問

- PR -

条件を指定して検索

- PR -

この記事に関するお問い合わせ

- 広告 -