離島の中の離島へ上陸 南大東島編

離島の中の離島へ上陸 南大東島編

更新日:2013/04/05 12:58

台風の位置を伝えるときによく聞かれる南大東島ですが、みなさんはどこにあるかご存知ですか?

日本地図を見ても欄外に載っていることが多く、沖縄本島から360kmも東に離れた位置にある孤島です。ガイドブックにも取り上げられることが少ないだけに、離島マニアの私としては訪問せずにはいられませんでした。

開拓から100年ほどしかたっておらず、独自の文化が根づく離島、「南大東島」の魅力をご紹介します。

悪天候に見舞われながらプロペラ機に揺られること65分

悪天候に見舞われながらプロペラ機に揺られること65分
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羽田から那覇へ朝いちばんの便で移動し、40分の乗り継ぎ時間で急いでプロペラ機に乗り換え、南大東島へ。那覇の天候はわずかに日差しがさす曇りがちの天気でしたが、南大東島が近づくにつれ天候が荒れてきました。

小さなプロペラ機です。小刻みな振動が連続する中、たまに来る大きな上下の振動も加わり、窓についた水滴が後方へ流れていくのが見えるものの、雨雲に遮られ島どころか海面さえも見えません。しかし南大東島を訪問できるというワクワク感でいっぱいです。

きれいな青空と海が出迎えてくれるはずだったのですが、機体を大きく揺らしながらなんとか着陸した南大東空港はスコールのような雨。私の到着を雨で歓迎してくれたのでしょう。でもこれはこれで貴重な体験です。台風の進路予測で有名な南大東島、小さな台風のようなこんな天気を現地で実体験できたと思って前向きに旅を続けましょう。

ではさっそく南大東島探検に出発です。

南大東島 唯一の信号機

南大東島 唯一の信号機
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レンタカーの軽自動車を確保し、町に繰り出します。

島で唯一しかない信号機がありました。信号機が必要なほど交通量が多い交差点でもないのですが、子どもたちの教育のために必要だとのことです。この信号機を使って、小学生が道路の横断の仕方を学ぶのですね。

信号機が1つしかない、そして、その交差点に人も車もいない、これこそが離島の旅行の醍醐味です。誰もいない、何もない、という非日常の体験が冒険心をさらにくすぐります。

街並みをよく見てみると、どの家も角度のゆるやかな低い屋根が特徴です。1階の窓には鉄格子が設置されている家までありました。これは防犯対策というよりは台風対策だと思われます。いざ台風が直撃したら風速50m以上の猛烈な風が吹き荒れます。南大東島ならではの家の特徴ですね。

おなかがすいてきたので、どこか食事ができるお店を探すのですが、激しい雨のせいか、歩いている人が見当たりません。誰かに飲食店の情報を聞いてみようと思いますが、残念ながら誰もいませんでした。

ガイドに載っているお店に行くのとはちがいます。離島を旅する場合は、食べ物を売っている店さえも、このように自らの足で探す必要があるのです。これはワクワクしますね。自分のカンを頼りにお店がありそうな方向に車を走らせます。

私の予想通り、わりとすぐに営業中の商店を発見しました。南大東島という離島ならではのものはないかと店内を探していると・・・

私が南大東島で食べてみたいと思っていた、「大東ずし」があるではありませんか。これはラッキー、さっそく購入です。

八丈島の食文化である大東ずし

八丈島の食文化である大東ずし
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南大東島は八丈島の島民が開拓のため移住したという歴史があり、この「大東ずし」は、伊豆諸島や小笠原諸島の島寿司がそのまま持ち込まれたものです。

特製のみりん醤油に漬け込まれたマグロが、甘酢のシャリの上に乗せられています。見た目は完全ににぎり寿司ですが、みりん醤油に漬けられたネタなので、生のにぎり寿司より日持ちがします。

ネタの魚はマグロ、カジキ、サワラなどが多いようです。ネタに醤油などをつける必要はなく、そのまま食べます。5貫をあっというまに食べてしまいました。私が食べた大東ずしは「松田そうざい」さんが作ったもので5貫で300円。その日に食べるのであれば、お土産で持ち帰っても大丈夫ですよ。


南大東島は沖縄県に属していながら、それほど沖縄らしさがありません。沖縄の方言も使われていなければ、食文化も違います。それは開拓自体が近くにある沖縄ではなくて、八丈島の人々によって行われたことによるもの。この大東ずしも八丈島の食文化が持ち込まれたものですが、今では南大東島を代表する食べ物となりました。

【松田そうざい】
住所:南大東村字在所196
電話:09802-2-2278

ちなみに那覇市内にも、この大東ずしが食べられる「喜作」というお店があります。

【喜作】
住所:那覇市前島2-18-6
電話:098-861-5501

岩をくりぬいて作った海水プール

岩をくりぬいて作った海水プール
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南大東島は沖縄の島なのに砂浜がなく、海水浴ができるようなビーチがありません。

南大東島などの離島では水はとても貴重なため、人工的なプールを作ることは出来ません。そこで考えられたのが天然のプール。海岸の岩をくりぬき、打ち寄せる波の力を使い海水を導くことによって、ポンプで汲む必要もなくなり、自然が作る天然のプールが生まれました。

島内には塩屋地区にあるこの海水プールと、海軍棒と呼ばれる2つの海水プールがあります。この日は天候も悪く、プールに高波がガンガン打ち付けており、これ以上近づくのが怖いくらいの高波でした。太平洋の波は本当に激しいものです。

波もなくおだやかな日には、このプールで泳ぐ子供たちの様子が見られるそうです。プールの中には魚も入ってきてしまうようで、魚たちといっしょに泳ぐことができる楽しい海水プールです。

島内最大の鍾乳洞 星野洞

島内最大の鍾乳洞 星野洞
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南大東島はサンゴ礁が隆起してできた島です。
砂浜がないのもこの理由。
島はほとんど石灰岩でできているので、このような大きな鍾乳洞もあるのです。

南大東島には100以上の鍾乳洞があり、その中でもこの星野洞が最大の規模を誇ります。このような離島に大きな鍾乳洞があるなんて驚きですが、本州にあれば観光地として十分な規模のものでした。

私が行ったときは鍵がかけられていて入ることができませんでしたが、電話をしたら、しばらくして係りの人がやってきて開けてくれました。このあたりも離島ならではのやりとりですね。

こんな大きな鍾乳洞をひとりで見てまわるなんて、冒険している気分でしたよ。照明もありますから暗くて不気味なんてことはありません。むしろ静けさと相まって幻想的な雰囲気が広がります。


南大東島は観光スポットはほとんどありませんが、行くこと自体に大きな意味がある島です。沖縄本島からさらに東に400km弱も移動してようやくたどり着く、まさに孤島という表現がぴったりの島でした。

南大東島には華やかなリゾート地や豪華なホテルはありませんが、観光地化されておらず、離島の本来の姿を見ることができました。私のように、スコールを経験したり、大東ずしを売っている商店をたまたま見つけたり、島でひとつしかない信号機や、係りの人の到着を鍾乳洞の入り口で待っているのんびりとした時間など、どれも普通の旅行では味わえない楽しさです。

沖縄を訪れる機会があったら、離島の中の離島、南大東島も旅程に組み入れてみてはいかがでしょう。

【星野洞】
電話:09802-2-4333
見学時間:要確認
料金:大人800円 子ども350円

掲載内容は執筆時点のものです。

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